麹町中学校の型破り校長 – 自由とは「自律」あってこそ –

読書
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千代田区立麹町中学校校長の工藤勇一氏による著書。
(現在は横浜創英中学・高等学校長)

定期テスト・宿題・頭髪及び服装の指導、そして固定担任制すら廃止…
工藤校長による「型破りな教育」はとても話題になりました。
一斉授業形式をはじめとする”受け身”の教育から、生徒と教師が自ら考えて動く自律型の教育を実現させた工藤校長の考え方は読んでいて刺激を受けます。

本書のターゲットは主に教育関係者と子を持つ親。
とはいえ現代を生きる全ての学生及び社会人にとって役立つ考え方が学べる一冊であるとも言えます。

  • 周囲に合わせるのが苦手
  • 失敗を恐れてしまう
  • 勉強へのモチベーションを上げたい

上記の様な悩みを抱える方も、悩みを改善するヒントが得られるでしょう。
勉強に仕事、生活のあらゆる場面で本書のノウハウは活用出来ると思うので。

自律と自立

  • 自律⇒他からの支配や制約を受けず、自らの考え判断して行動すること
  • 自立⇒ある特定の組織及び人に頼らず、独り立ちすること

一見型破りな工藤校長の教育の目的は「自律により、自立を成す」生徒を育てることであり、社会で生き抜いていける大人になってほしいという想いが根底にあるのでしょうね。
「自ら考えて行動する力」と「自分にあった学習スタイル」は将来どんな職業に就くにせよ、社会で生き抜く上で必須であるといえますし。

「自立」「自律」の意味と違い - 社会人の教科書
「自立」「自律」の意味と違いとは

服装及び頭髪に関する校則は必要か?

首元のホックを閉める、スカートは膝下、ツーブロックはNG…
他にもありとあらゆる校則がありますね。
しかし工藤校長はそれらの校則及び検査を廃止しました。

最もな理由としては「頭髪・服装の細かな規則より重要な事は他にもある」という事ですかね。
自立した大人になる上で大切となる考え方、命を危険にさらす行為、人を傷つけない言動…
身だしなみのマナーより重要な事は他にも沢山あるのは確か。

そうは言っても服装や頭髪だって周囲に影響あるじゃないか!!
あまりだらしがないと不快感を及ぼしたりするし。

確かにそれは正論ですが、わざわざ校則で定めなくても各自で気を付ければ良い事だともいえます。
中学生になればどういう服装が周囲に「だらしがない(不潔)」という印象を与えるのか、自分で考えて判断出来ると考えられますし。
寧ろその「自ら考えて判断する」というプロセスが生徒にとって重要であり、過度に校則で縛るとそのプロセスを阻害する可能性があるといえます。

勿論、全ての生徒がそうとは限りませんが、学校の本来の目的である「自立した生徒を世に送り出す」事を直接阻害する程であるかといえばそんな大それた事ではないでしょう。
本書でも述べられてますが、工藤校長は生徒が上履きのかかと部分を踏みつぶしていたのに気づかなかった事がありますし。

それに校則を作るとなると生徒だけでなく教職員にもしわ寄せがきますからね。
どんな基準で何を定めるかを考えて議論しなくてはいけないし、校則が定まったらいちいちチェックする手間も生じますからね。
もし校則を作るのであれば、事前に他の問題と比較して優先順位を考えるのは必須ですかね。

従来の定期テストを廃止

中学校からは定期テスト(中間・期末)が実施されるのが定例。
しかし麴町中学校においてはその従来の定期テストを廃止しました。
代わりに「小テスト」「単元テスト」「実力テスト」の3種類のテストを設けて実施する様になりました。

小テスト

単元テストの予行練習に位置付けられているテスト。
授業中に実施されており、成績には直接反映されません。
なお採点は自己採点であり、学習においてどれだけ理解しているかの把握が出来ます。

単元テスト

文字通り教科において単元が終わる事に実施されるテスト。
3種類のテストにおいて唯一成績に反映されます。
しかし単元で区切って実施される為、中間テストに比べると出題範囲は広くありません。
なので生徒達にとって事前に勉強しておく項目を把握しやすいでしょう。

このテストの注目すべき点は一度だけ自己申告にて再チャレンジが可能だという事です。
再チャレンジにて一度目より良い点数を取った場合、そちらを成績に反映出来ます。
その為、生徒達は「分からなかった点を把握して分かる様にする努力」をする様になります。
一度だけのテストだと点数に一喜一憂するだけで終わりがちですからね…💦
(勿論、分からなかった点を見直して改善する生徒もいるでしょうけれど)

実力テスト

年に4~7回実施されるテスト。
成績には反映されない為、生徒自身が学習における理解度を確かめる為だけに臨む事が出来るといえます。

※3種類のテストの説明に関しては全て本書を参照

小テストで単元テストに向けてリハーサルをする、そして単元テストで「どこまで理解しているか?」を把握する、締めくくりに実力テストでどれだけ実力が付いたかを試す…
生徒自身が「分からない点を分かる様になる」という学習における楽しさを、テストを受けていく事によって身に付けていく。その際には自分に合った学び方を身に付けていくのがコツ。
テストによるアウトプットを重視していく方が自ら学習している能動的な感覚を実感出来るでしょうし、学習する事自体を楽しめる様になるでしょうね。

心の教育とは?

近年「愛国心」に関する項目を道徳に導入するかが話題になりました。
思いやりや協調性…いわゆる『心の教育』に関しても批判的な見解を述べています。

「そもそも人の心は未熟なもの」
それが工藤校長の考えであり、実際校長自身も「短気な部分は未だにある」という趣旨をエピソードも交えつつ述べています。

心より「言葉」と「行動」を変えよう

心すなわち性格というものは変えようと思っても変えられるものではない。
人間には「善と悪」「長所と短所」、どちらも備えているもの。
それらは各々によって違う。

なので「言葉」と「行動」に着目するのがベターですかね。
根っからの善人を目指そうとしても、生まれ持った性格によってはそれが成せない事もある。
だから「何をすれば人は悲しみ、怒るのか?」という事柄の知識を増やしていき、その事柄に該当する事をしない様にする。
また言葉に関しても「人を傷つける発言は何か」を学び、それに該当する言葉は用いない様に言い方を考えて発言する。

言葉と行動を変える事であれば、「性格を変える」事よりも努力が実りやすいですからね。
(とはいえそれも一朝一夕で成せる程に楽ではないけど…)

人は違って当たり前

人はそれぞれ違うからこそ、互いに好き嫌いが生じる。
よって時に対立が生じる事もある。

上記の事を受け入れる事が、人との関係を築いていく一歩かもしれません。

昨今では「思いやり」及び「協力」という言葉をよく耳にする様になりましたけれど、
「誰を思いやるか?」「何に協力するか?」によってそれに応えるか否かは変わるもの。
そもそも己の気持ちに反して無理に従おうとしても、ストレスが溜まりすぎて途中で反発する事だってある。
なので従うか否かは自分次第、どうしても納得がいかぬのなら従わないのも選択としてアリでしょう。
勿論、それは時と場合によりますし、どんな選択肢を選ぶにせよ責任は己に及ぶ事を忘れてはなりませんけどね…

”協力”は目的ではない

いわば手段といったところでしょうか。

協力しようとして皆の意見に耳を傾けようとしても、そのせいで迷い続けた挙句目的を達成出来なくなる。
それならば皆の意見はスルーして、強引にスタンドプレーで押し通す…
それで目的を達成出来る事だってあるでしょう。
「サッカー等の球技において勝利を収める」など、例は探せば見つかるでしょうし。

とはいえそれは余程の実力者じゃないかぎり成しえないのも事実でしょうね。
やはり文化祭などの学校行事は勿論、仕事においては他者との協力が欠かせないもの。

その際は意見の異なる相手とどう付き合っていくかが問題になりますかね…。
対応策としては…

  • 異なる意見を受け止めて、その意見を認める
  • イラっとしたら「イラッとした自分」を意識してみる

因みに「受け止める」ってのは「受け入れる」とはまた異なりますかね。
相手を認めた上で、相手を不快にさせない様に言葉を選んで「そういう意見もある」という返答を
するといったところでしょうか。

正直異なる意見を受け入れるのは私も苦手です…
議論の際に相手から思いもしない自分の考えとは反対の意見を言われると、イラッとする時があります。
なのでその際は「イラっとした自分」を俯瞰したイメージを脳内浮かべてみる、
そして意見が異なる相手と自分に共通する目的は何であるのかを今一度考えてみる。
その2点を心がけるだけでも大分心は落ち着くでしょうしね。

とはいえ意見の異なる相手との対話ってのは難しい事には変わらないでしょうけど…💦

この本を読んで改めて思うこと

「己の頭で判断して考える」
それが如何に重要であり、また如何に難しい事であるのかを考えさせられましたね。
自分では考えたつもりであっても、それはネット等の意見を「自分の考え」だと錯覚する事ってままありますし…

そもそもこの本を読んだキッカケとしては「今において最も有効な教育」というものを知りたかったからですね。
昨年2月以来、例の騒動において同調圧力やら分断などで世は混乱状態。
その状態を生み出したのは私たちが受けた教育も影響しているのではと考えていたものでして…

やはり周囲の意見に惑わされず、「自分が本当に望む社会」「自分は何をどうしたいか」「何が正しいのか」…それらの問題を自分の頭で考えられる力と行動力がこれからの社会を生きる上で重要でしょうね。

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