漫画『ちーちゃんはちょっと足りない』感想 – 欲しがるほどに足らなくなる –

漫画・アニメ
ご迷惑をおかけしています!

表紙は極めてポップで可愛らしいデザイン。

【表紙に描かれているメインキャラの「ちーちゃん」こと南山千恵ちゃんがワチャワチャと騒動を起こす日常系漫画】

予備情報を知らない人がAmazonでこの漫画を見つけたら、大抵そう思うかもしれません。
しかしこの漫画、見た目のイメージで購入すると(精神的に)痛い目を見る作品です。

今回はそんな『ちーちゃんはちょっと足りない』という漫画の感想について語っていきたいと思います。

こんな方にオススメ

  • 暴力など過激な表現に頼りがちな漫画にうんざり
  • 綺麗事だらけの作品は胡散臭く感じる
  • 自らを戒める作品が読みたい

前半はいわゆる日常系作品と言えなくもないです。
同年代の子達に比べると精神的にも肉体的にも子供っぽい”ちーちゃん”こと千恵ちゃん
一見おっとり天然系で優しい娘の小林ナツ
成績優秀でメガネ美人だけど性格はキツめ(正義感は強い)な旭さん
この仲良しトリオを中心に物語は進んでいきます。

でも後半になると千恵ちゃんが起こしたある事件によって、この仲良しトリオの関係に激震が走るのですよね。
(そこからがこの漫画の見所)

事件といっても人が命を落としたり、大怪我をしたりすることはありません。
中学生の日常においては、絶対起こらないとは言い切れないあるトラブルといったところでしょうか。
だからこそより生々しく感じます。

その事件により千恵ちゃん達は怒ったり、涙を流したりする羽目になる。
しかし一番悲惨なのは小林ナツですかね。
ナツは事件に加担している(してしまった!?)人ですけど、その場の流れと以前から拗らせていたコンプレックスによって結果的にそうなったという感じ。
お世辞にも主体的とは言えません。

それ故かナツは加担して以降、ネガティブな心の声を連発しまくります。
その声は我々読み手だけにしか可視化されないので、読んでいてキツくなります。

とはいえ元々自分の自信があるポジティブ思考な人なら、キツいというよりも
『ナツってヤツ何なの!?凄いムカつくんだけど!?』
って怒りの感情が湧く場合もあるでしょう。

しかし私含めたネガティブで物事を悪く考えがちなところがある人だと、
思い当たる節がありすぎでキツくなります
(これが作者である阿部共実さんの狙いかも)

「俺があんな事言ったから〇〇さん不機嫌になっちゃったのかも…」
「この前の仕事のミス、同僚も上司も根に持つに違いない」

こんな感じなネガティブ思考をラストまでバンバン描写しますからね。
しかしネガティブになりすぎな人にとっては、読み方次第では己を省みるのに活用出来そうかと思います。
日頃から読むにおいてはシンドイけれど、己を戒める必要があるなと感じた時は読んでみるのもいいかもしれませんね。
少なくとも書店によく並びがちな「前向き」や「メンタルを強くする」と誇張している自己啓発本よりは、己自身の学びに繋がりそうです。
とはいえ心身共に疲労しすぎている時に読むのは控えた方がいいですかね…

逆にオススメできない人

  • ストレス解消に向けた爽快感を求めている
  • 心身共に疲れすぎてるので癒しを求めている

先程も言いましたが、この漫画は思春期少女の心の闇をバンバン描いてます。
ネガティブ思考の悪い癖、現実のマイナス面ばかりにいってしまう理由…
そういうのを考えるにおいては有効かもしれません。
しかし読む上では精神的に相当エネルギーがいる漫画です。
逆に無理して読むと、余計にネガティブを拗らせたりしてデメリットとなる可能性すらありますね。
なので疲れ気味の場合、一度休息をとってある程度余裕を取り戻してから読むのがベターでしょう。

まとめ

前半は一見ギャグありの日常系漫画、しかし後半になると心の闇全開の鬱漫画。
だからこそ読者の心に訴えるものがある。
変に過激な表現を用いず、日常において起こり得る事件を元にストーリーが展開するからこそ、
読んでいて生々しく感じるのですよね。
その事件も決して大事件ではなく、中学生同士においては起こる可能性が無いとは言い切れないものですし。

後半はナツの心の闇の描写が見所。
ナツがそんな思考になってしまった理由を想像しながら読むと、更にこの漫画のメッセージを理解出来そうな気がします。
ナツはお世辞にも裕福ではなく、成績だって良いとはいえない。
でも同様な環境にいるのはナツだけでなく、”ちーちゃん”こと千恵も一緒。
母子家庭なのもおそらく2人に共通している点かも。

ではなぜナツはあんなにもネガティブで、ちーちゃんはあんなにもポジティブなのだろうか?
おそらく自己肯定感を高める為の機会が多かったか、少なかったからでしょうか。
ちーちゃんには高校生の姉がいて、叱られる時は多いけど、褒める時はしっかり褒めてくれた。
しかしナツの場合、兄弟はおらず母子家庭で母親は昼間パートで留守状態。
母親には叱られる時はあれど、何かやって褒められた記憶はほぼ無いのかも。
(あったとしても、マイナスの思い出に目がいきがちかも)

当然周りの環境のせいばかりではなく、本人自身の問題だってあるでしょう。
しかし人間は育ってきた環境に左右されがちなのも事実。

読んでいて暗い気持ちにはなるけど、考えさせられることも多いです。
人生経験を積む度に、読むと改めて気づかされる漫画だと思いました。

余談

もし「ちーちゃんはちょっと足りない」がお気に召したのであれば、以下に紹介する映画も一度観てみる事をオススメします。

闇金ウシジマくん
累計620万部を突破する漫画家・真鍋昌平の問題作『闇金ウシジマくん』が、TVシリーズに続き待望の映画化! Rating PG12 (C) 2012 真鍋昌平・小学館 / 映画「闇金ウシジマくん」製作委員会

『闇金ウシジマくん』は題名通り、裏社会の人間を主人公としており暴力など多少ハードな表現があります。
しかしこの映画版第一弾においては、団地住まいの貧困家庭など”心の貧しさ”に焦点を置いたストーリーが最も見所だと言えます。
ハードは表現はあれど、映画版(ドラマ版)は原作漫画に比べれば全然マイルドですからね

特にこの名言のシーンは必見。

『楽に稼ぐコトに馴れると、客がおごる5千円の食事が当たり前で感謝しなくなる。少しずつ感謝する心を安売りしてるのよ……』

映画 闇金ウシジマくん


家族がいること、仕事があること、学校に通えること…
そのどれもが当たり前だと思ってはならない。
自分を支えてくれる身の回りの全てのもの(人)への感謝は、常に心掛けておきたいものです。

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