漫画『ニューノーマル』感想① – 覆い隠されたユートピア –

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「お前等ボーン(生まれながら)のマスク世代は口をまるで性器みたいに思ってるんだってな」

第8話「隔離」(第2巻収録)

この漫画のジャンルはいわば近未来SF要素込みの青春モノといったところでしょうか。
時代設定は2040年代前半。
2020年に発生したパンデミック騒動から約20年後の世界を舞台にしております。

この漫画の時代においては、マスク着用が当たり前どころか既に義務化しています。
そして上記に引用したセリフにもある通り、ボーンのマスク世代にとってマスクはもはや下着当然。
素顔で外を歩くなんて真似はもう「素っ裸で外を歩く」のと同じ。
20年以上も習慣化すれば、感染対策を通り越して下着当然の扱いになってしまうのでしょうか…。
人々の羞恥心も感覚も変わってしまうのですね。
ちなみにこの漫画内のTVに映る顔写真には、鼻と口の部分にモザイクがかかっています(苦笑)

しかもこの作品の日本は東京都が高いコンクリートの壁で覆われています。
いわばパンデミックの被害拡大阻止の為ですが、都民にとっては国から見捨てられた様なもの。
故に2040年代の東京都はジャングル化が進行中。
かつてのPS3用ソフト「TOKYO JUNGLE」みたいな様相を呈しています。

もはや焚書!?

「公共の場でのマスク着用が義務化されて以降、現在の倫理にはそぐわないとして
メディアでくちが映し出されることはなくなった」

第0.5話「私たちの日常」(第1巻収録)

マスク着用が義務化して以来、倫理観が大きく変わっている点もこの漫画の特徴。
公共の場において素顔になる(鼻と口を晒す)事は猥褻物陳列罪も同然。
TVニュースは勿論、雑誌のグラビアでも鼻と口は常にマスク等で覆われています。

「ペアレンタルコントロール(大人からの管理)によって私たちは
そういうコンテンツを見ることもできない」

第0.5話「私たちの日常」(第1巻収録)

故にパンデミック前の映画やドラマは、基本的に素顔を晒している為に規制されています。
少なくとも未成年者はそういう類の作品を観る事は禁じられています。

BP(パンデミック前)の世界に憧れて

しかし未成年者であってもBP(before pandemic=パンデミック前)時代の映画をこっそり観ている人だっているでしょうね。
この漫画のヒロインであり、BPの世界に憧れを抱いている女子高生の夏木咲(なつきえみ)もその一人。

そもそも彼女がBPの世界に憧れを抱いているのも、
父のBP時代の映画をこっそり観たのがキッカケになっています。

素顔の人物達が当たり前に会話したり、食事をする。
そんな映画を観ている夏木さんは、恥ずかし気な表情を浮かべつつ、
伸び伸びと生きる映画の登場人物に憧れも抱いている風に見えました。

そんな彼女はとあるキッカケで防疫隊の人物と出会います。
ちなみに『防疫隊』とはその名の通り、パンデミックによる被害拡大を防ぐ為に街と市民を防衛する部隊。
いわば第一次・第二次大戦時に存在していた特高警察の様な存在でしょうか。
実際、作品内においても反マスク部隊を力づくで制圧したりと高圧的な印象があります。

影が濃い程に謎も多い?

夏木さんが出会ったその”防疫隊の人物”とは相良雅人
この作品のキーパーソン且つもう一人の主人公(!?)ですかね。
影がある人物でアウトロー的な雰囲気を漂わせており、
ダークヒーローといった感じです。

※そういやこの作品の主人公である男子高校生の秦遥人(はたはると)に関しては、
ここまできて何の言及もしてねぇや😅💦
まぁこの感想記事に関しては、夏木さんと相良さんの比率が
どうしても高くなってしまうので、
そこはご勘弁を…

ちなみに記事の冒頭に引用したセリフ「お前等ボーンのマスク世代~」を、
夏木さんに対して吐いたのは相良さんです。

年齢は30代前半、無精髭を蓄えた長身の男性。
クールで斜に構えた物言いが特徴、ヘビースモーカー。
でも根は優しそうなお方♪
防疫隊の人間でありながらも、プライベートでは基本的にノーマスク生活を送ってます。
(住処であるサガラサイクル、車にいる時はそうですね)

相良さんに関しては、第2巻において彼の過去に焦点を置いたエピソードが2話収録されています。
その過去編の時代は2020年~2021年。
リアルにおいてもパンデミック騒動によって世界が大荒れしだした時代です。

過去編を読んで分かったことは…
相良さんはかつてのパンデミック騒動において大切なモノを多く失った。
そして失った多くのモノと引き換えに新しいモノを手にして、
現在の相良雅人」となったということ。

相良さんもやはり重い過去を背負っているのですね。
あの影のあるダークヒーロー的な空気感からして、何となくは想像してたけど…。
しかし過去編といっても、描いているのは相良さんの小学生時代のみ。
その過去編から現在に至るまで、どんな人生を歩んできたのか気になります。
何より「なぜ防疫隊に加入したのか?」が謎です。
防疫隊はおそらく国(政府)直轄の機関、過去編を読む限りだと警察などの国家機関に対して
恨みを抱いている可能性は否定できないですし…。
今後その辺も徐々に明かされていくのでしょうか?

今後の展開が気になる

相良さんの謎多き過去と本音、
相良さんとヒロイン夏木さんの関係、
防疫隊の実態、
壁の向こう側のジャングル化した東京の実態…、

気になるところが多い漫画。
多くの謎と人間関係…、
これらの点がどう明かされて、どう変わっていくのか?
先を読むのが本当に楽しみです。

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