1984年(小説) – 未来はディストピア!? –

読書

BIG BROTHER is watching you

このキャッチフレーズに何となく聞き覚えのある方は結構いるのでは?
『監視社会の恐怖』を描いたSF小説として定評のある本作品。
この作品はジョージ・オーウェル氏が1949年に執筆した小説であり、オーウェル氏が発表した最後の作品です。
なおこの作品はディストピア系小説の原点として、現在でも多くのコンテンツに影響を及ぼしている作品と言えます。

一昨年から続く例のパンデミック騒動、先日起きた元総理の銃撃事件、電力供給不足による節電要請…
2022年になってから世界は更に過酷な形相を表していますね。
そんな今だからこそ読むのに相応しい作品かもしれません。

今回は『1984年』を読むのにオススメな方、作品を理解する上で必須となるポイント、そして私の感想を語っていきたいと思います。

https://www.amazon.co.jp/dp/B009DEMC8W/ref=cm_sw_r_tw_awdo_MWTMBZWDXKA9JM1QRR2B

どういう作品?

大まかに言うのなら…
「監視社会全体主義のなれの果て」
という世界を描いた作品です。

『1984年』において、世界はオセアニア・ユーラシア・イースタシアの三つの超大国に分かれています。
しかしその三国の思想や価値観はどれも似通っています。

主人公であるウィンストンが属しているのはオセアニア。
この国においては完全なる身分社会が成り立っており、ウィンストンは中間層的な立ち位置である党外郭に属しています。
しかし上層にあたる党内局に属する人間以外は生活も思想も全て管理されており、誰もが平等に貧しくて息苦しい生活を強いられていますね。
ウィンストンもその一人であり、普段は真理省の記録局で勤務しているけど、日々モヤモヤとした不満と疑問を抱えながら生きています。

そんなウィンストンがある日、ジュリアという奔放な女性と出会います。
彼女は真理省の別部署に勤める人間です。
ウィンストンとジュリアは互いに惹かれ合うが、その先に待ち受ける運命は…。

お世辞にもハッピーな結末ではないけれど、読後は色々と考えさせられます。

こんな方にオススメ

  • 今の世の中に疑問と不満を抱いている人
  • 考えさせられる作品が好きな人
  • ディストピア小説が好きな人
  • 暗くてシリアスな作品が好きな人

読んでいると「本当にフィクションと言い切れるのか?」という気になります。
言論統制、情報・歴史の捏造…隣の大国でも行われている事が出てきます。

それどころか我々が住んでいる日本においても似たような事が起きているかもしれません…。
一昨年のパンデミック騒動以来、全体主義化が進行している気がしますし。

現実は『1984年』に近づいている?

発言の自由が奪われている

オセアニアにおいてはビッグ・ブラザー党にとって不都合となる事実は真理省によって改竄されます。
真理省の記録局に勤務するウィンストンも改竄する役目を果たす一人なのですよね。
またビッグ・ブラザー党の信条に反する思考をする市民は「思考犯罪者」として愛情省によって粛清されます。

先に述べた通り、お隣の某大国で実際に行われている事と共通してますね…

「香港がどんな風に死ぬか知るべき」失われた自由 地元記者は | NHK
香港国家安全維持法が施行された香港。言論の自由が失われるというのはどういうことなのか。究極の選択を迫られた記者たちの姿を追った

また日本においても「侮辱罪」が厳罰化。

「侮辱罪」が厳罰化。どんな行為が該当する?過去に有罪判決を受けた事例がこれだ
今回の改正刑法で「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」が追加された。施行された7日以降の行為が対象となる

「如何なる発言が侮辱に該当するのか?」

その基準は未だ不明瞭です。
例えば真っ当な政治批判の記事を配信した記者が【侮辱罪】に該当するとして逮捕されるケースも考えられます。
政治家の「侮辱された!!」という鶴の一声によって…。

厳罰化の影響はマスコミのみならず、我々一般人が利用しているTwitterなどのSNSに対しても影響は及ぶかもしれません。
ちょっとした軽口のつもりでも、相手が「傷ついた」と感じた時点でその発言が罪となる…。
言いたい事がますます言いづらくなる世の中ってのは息苦しいものです。

知っておくべき設定

『1984年』においては設定が細かく作られており、理解する上で覚えるべきことが多いです。
それ故に難解な作品だと評する声もあります…。
(私も正直理解できてない点があります)

大まかにですが、知っておけば理解しやすくなる点について紹介したいと思います。

二重思考

ふたつの相矛盾する信念を心に同時に抱き、その両方を受け入れる能力をいう。

「1984年」ハヤカワepi文庫版 P328 より引用

この単語は作品を理解する上で一番重要であり、一番分かり辛いと言えます。
正直私も未だによく分かっていません(苦笑)

具体的に言うなら…

・「A議員が横領した」という事実があり、それを「横領したのはC議員」と捏造
・その捏造した事実こそが”真実”だと認識する

という事でしょうか。

ビッグブラザー党のスローガン、各省の仕事…すべてが二重思考に基づいているといえますね。

三つの超大国

  • オセアニア(英・米の南北・オーストラリア)
  • ユーラシア(ロシア・英以外のヨーロッパ)
  • イースタシア(中国・日本)

※()内の国名は”超大国内の領土”に該当

主人公であるウィンストンが属しているのはオセアニアです。
オセアニア国内はビッグブラザー党が牛耳っており、4つの省によって国家は運営されています。
(4つの省に関しては後述します)

ちなみに三国とも独裁かつ全体主義国家です。
この三国間で対立・同盟が成立していますが、その状況は一定の年数を経て変わります。
とはいえこの”対立・同盟”は三国がグルになって行っています。
国内のピラミッド社会を強固なものとするために…

4つの省

  • 真理省(情報・歴史)
  • 平和省(戦争)
  • 潤沢省(経済)
  • 愛情省(治安・法律)

主にオセアニアを運営しているのは上記の4つの省といったところでしょうか。
4つの省の上にはビッグブラザー党が控えている形で。
ちなみに省の外見は「巨大なピラミッド形」であると描写されています。

しかし4つの省のやっていることは、名称とは逆の事をしています。
真理省では党に不都合な情報と歴史を捏造・消去、
平和省は戦争を働きかける、
潤沢省は党内局(エリート)以外の国民全てが平等に貧しくなるようにする、
愛情省は法律に反した者に容赦なき拷問を施す、
という風に。

確固たるピラミッド社会

オセアニアは典型的なピラミッド社会であります。
それ故に国民を等しく管理出来ると言えますけどね。

  • 党内局(上層、ピラミッドの頂点)
  • 党外郭(中層、主に4省に勤める層、ホワイトカラー)
  • プロ―ル(下層、労働者、ブルーカラー、国民の85%が該当)

ちなみに真理省の記録局に勤めるウィンストンは党外郭に該当します。
しかしその暮らしは不自由でお世辞にも裕福ではありません。
電力供給ですら国に管理されており、時間帯によっては停電になる場合もあり。
(今の日本でも電力不足による節電要請がなされてますね…)

トップである党内局の人間以外は「皆平等に貧しく不自由である」社会でしょうか。

三つのスローガン

ビッグブラザー党は三つのスローガンを掲げています。

  1. 無知は力なり
  2. 戦争は平和なり
  3. 自由は隷従なり

1.に関してはトップである党内局を除いた層は”無知”にしておくこと。
不都合な情報を行き渡らない様にして、中下層の反旗を阻止する。
それがピラミッドを維持する上で重要なことですからね…。

2.に関しては戦争によって中下層の財と労働力を大量消費するのが目的。
その目的は三国とも共通しており、利害関係の一致により永続的に戦争が繰り返されています。
故に三国内の敵対・同盟関係は一定の年数を経て、コロコロ変わりますね。
それも三国それぞれが強固なピラミッドによる独裁社会を永続させるために…。

3.は上層に従ってさえいれば、中下層は国内で生きていける保証はあるということですね。
”隷従”とある通り、「上層は神様!!」というのが中下層に対する上層からのメッセージ。
中下層内において党のスローガンに反する思考をする者を見つけたら、隣の隣人又は家族(!?)がチクるというのもアリなのが「1984年」の世界の特徴。
しかもチクったものには報酬アリ…。

参考リンクと後書き

今回の記事を執筆するにあたり、中田敦彦さんの解説動画が大いに参考になりました。
作品内に出てくる設定及びあらすじを詳細に説明しており、とても分かりやすいです。

【1984年①】恐怖の監視社会を描いたディストピア近未来小説
https://youtu.be/wG2u0Yo_m3I

【1984年②】現代と類似する監視社会の結末は?
https://youtu.be/my9ESHFNDRk

難解ではありますが、惹き込まれる作品です。
「1984年」の様な監視社会と化す予兆が今の日本に感じられるからでしょうか…。
実際この先の日本、いや世界はどう変わっていくのか?
それは誰にも予測不可能ですね。

歴史上の大きな転換期ともいえる今の時代、少しでも自由と権利が保証される世界となってほしいものです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました